洋服を購入したときや打ち合わせで訪れた会社の去り際に丁寧に行なわれる「お辞儀」や「見送り行為」は、時として過剰に感じられるものです。今回の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』では著者の廣田信子さんが、先日起きた高齢ドライバーによる死傷事故に心を痛めながら、報道の一部にあった見送り行為にスポットをあてています。

お客さんの「見送り」は本当に相手のため?

こんにちは! 廣田信子です。

昨日、ガソリンを入れるためスタンドに寄りました。ガソリンを入れ終わると、従業員の人は、いつものようにカードと領収書を窓越しに渡し、走って出口まで行き、私の車を誘導して見送ろうとスタンバイしています。

これも、いつものことですが、車を出すのを待たれているので、窓を閉め、受け取ったカードや領収書等をお財布の所定の位置に戻して、シートベルトをして、動き出す動作を急いでやらなくてはという気分になって何か落ち着きません。

車がほとんど通らない裏道に出るので、別に誘導はいらないし、出てすぐ横断歩道で止まることになるので、早く車を出さないと彼が仕事に戻れないと思うと、何かあせる気持ちになってかえって危ないのです。

特に今回それを思ったのは、先日の高齢女性の運転による死傷事故を思い出したからです。加害者になってしまった高齢女性が、車の修理工場を出て、従業員が車を見送っているので、早く行かないと悪いと思って、つい赤信号と知りつつ車を走らせてしまった…と。そのコメントを聞いて、私には、見送られているので早く車を出さないと焦るという感じがよくわかりました。

この「見送り」という行為は、本当に必要な顧客サービスなのでしょうか。私は、なくていいのにな〜と思ってしまいます。ガソリンを入れ終わって領収書等を渡すときに、「ありがとうございました」と言って終わりにして、持ち場に戻ってくれた方が、どれだけ楽かといつも思います。

人手不足で従業員の人たちが忙しそうなときなど、お財布に渡されたものをとにかく押し込んで、バックにもしまわず、とにかく車を出すときもあります。そんなこと気にしないで、待たせておいて、ゆっくり車を出す準備をすればいいと思われる方もいるでしょうが、なかなかそれができません。早く車を出してあげないと…と思ってしまう人はやはり少なからずいるのです。

これから人手不足はさらに深刻になるので、むだなことに時間を使わせたくないという気持ちは、もっと強くなる気がします。相手を急がせてしまうような「見送り」は、やめた方がいいのに…顧客対応の常識を変えていくべきでは…と今回の事故の報道をみて思いました。

ビジネスマナーでも疑問に思うことがあります。会社に打ち合わせ等で伺うと、相手の方は、わざわざエレベーターホールまでいっしょに出て、ボタンを押して、エレベーターを呼び、私がエレベーターに乗っても、ドアが閉まるまで丁寧にお辞儀されます。どうも、これは当たり前のビジネスマナーのようです。

私は、これも、いいのにな〜と思ってしまいます。もう話は終わってあいさつをすませているのに、エレベーターの階数ボタンをにらみながら、無理に雑談してエレベーターを待つものなんか中途半端で、相手にむだな時間を使わせて悪いという思いと、自分自身も、早く一人にしてもらった方が、次のことに頭を切り替えられるのに…と思ってしまいます。

相手に対する思いやりがマナーだとしたら、この「見送り」の常識って、マナーなのかな…という気がしてしまいます。この私の感覚が特殊なのでしょうか。これについてはまったく自信ありません。

成功者の営業の極意みたいな本で、社長になっても、相手をどんなときでもエレベーターが閉まるまで見送った、1階まで降りて、姿が見えなくなるまで見送った、みたいなエピソードを目にするので、やはり、丁寧な見送りは、気配りが行き届いているとか、謙虚だとか、評価されるものなんでしょうね。

でも、まだ疑っています。相手に対する敬意や強い思いの現れということではなく、マナーだから…とどんな時でも必要かな〜と。

私は、自分がそうなので、自分の事務所への来客は、あいさつを済ませて玄関まで見送ったら、そこでお別れします。早く解放してあげた方が相手のためと思って、エレベーターまでは見送りません。エレベーターを待ちながらスマホの確認したいでしょうし、次の段取りを考えたいでしょうし…と。

そうそう、買い物をしたときもそうです。洋服などを買うと、紙袋を会計のカウンターで渡さず、「入口までお持ちします」とカウンターを出て、店の入口で紙袋を手渡されます。私としては、早く荷物を受けとって、あとは自分のペースで動きたいのに、店員さんに出口まで急がれると、それについていかなくはならなくて、あまりありがたくありません。カウンターを回って出て来るのを待っていなくちゃいけないし、

この前など、後ろのお客への対応を別の人に指示しているので、よけいに時間がかかっていて、早くここで渡してくれていいんだけどな〜と内心思いながら、これが接客マニュアルなんだろから、付き合ってあげなくちゃと思う訳です。

そんな私も、遠方から来てくれた方、久しぶりにお会いした方など、話が尽きず名残りおしいような関係の人と別れるときは、やはり、自然に「見送り」に時間をかけています。

あまりあっさりでは寂しいかもしれないけど、これからの時代、お客さんとの関係は、もう少し合理的でもいいんじゃないかなと思うのです。

行きつけの美容院の担当者は、もう付き合い長いので、お会計が終わると、カウンターであいさつしてそれで終わりで、入口まで出て見送りません。他の従業員の方が見送っている様子を見かけるので、一応は、入口見送りがマニュアルなんでしょうが、あっさり別れの方が、私も気持ちが楽です。

気持ちよくあいさつできていれば、「見送り」に時間をかけないと相手に失礼ということはない…と私は思うのですが、皆さんはいかがですか。

今回の高齢者の事故では、事故に会われた方はもちろんですが、見送っている人を早く解放してあげたいとあせって事故を起こしてしまった高齢者の方、良かれと思ってずっと見送っていた方、何だかみんなが気の毒でなりません。

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